HOME >
強くて軽くて安い新素材 “ナノ結晶セルロース”
2012.09.21|shiozawa
丈夫で安い素材といえば鉄やアルミ。
しかし“飛行機のボディ”や“F1のボディ”や“ゴルフクラブ”、“バイクのカウル”など強い衝撃に耐えられ、しかも軽くなくてはいけないものには
現在カーボンファイバー(炭素繊維)が多く使われています。
そんなカーボンファイバーより強くて安い新素材が最近注目されてはじめているようです。
その素材の名前は“セルロース”。
■カーボンファイバーより強く、価格は10分の1 木材原料のナノ素材
木材パルプから製造される「ナノ結晶セルロース(NCC)」が注目されている。
カーボンファイバーと同等以上に軽く強いが、コストが1/10以下に抑えられるという。
米国森林局は7月16日(米国時間)、170万ドルをかけて、木の切れ端やおがくずといった木材の副産物からナノ結晶セルロース(NCC)を製造する工場を開設した 。
この工場が作り出すNCCは、ケブラーやカーボンファイバーと同じくらい軽量なのに強度が高いことが特徴だ。透明なため、防弾ガラスの代わりにも利用できる。
だが、本当のセールスポイントはコストが低いことだ。
木材からNCCを作った場合、コストはカーボンファイバーやケブラーの10%足らずに抑えられる。
現在の目標は1kgあたり10ドルだが、大量生産すれば1kgあたり1~2ドルまで下がると見られている。
引用:産経新聞
まず、己を知るには敵を知らないといけないのと同じで
比較になります現在主流のカーボンファイバーを知らねばなりません。
<カーボンファイバーとは>
宇宙技術で開発された炭素素材で、軽量でありながらも強度がある。
黒っぽい色をしており、近づいてよく見てみると編み物のような繊維(ファイバー)の模様が見える。
主に外装パーツに使われ、軽量で熱にも強いのでサイレンサーのアウターとしても採用されている。
ただし、割れやすいのが難点。
引用:WEBLIO辞書
で、このカーボンファイバーは鉄と比較すると重さが1/4で強度は約10倍。
いかに優れている素材なのかがわかります。
しかし、このカーボンファイバーの最大の難点がコストが高い事。
そこで今新しく注目されはじめている“セルロース”はこの最大の難点を解決してくれるということで、
強くて、軽くて、安い
の三拍子がそろうわけです。
で、この強固なセルロースの作り方や難点の説明が以下の通り。
木材を細かく切り刻んでパルプにすると、すべてのセルロース繊維を結合しているリグニンが失われるため、水の中で浮かぶようになる。
これを乾燥させると毛玉と同じくらいの強度になるが、さらに細かく砕いてナノフィブリル(ナノ繊維状構造をもつ物質、ナノ小繊維)にすると水素結合が生じる。
これに強酸を使用して余分なものを取り除けば、強固な材料であるNCCが分離されて残る。集めた木材パルプの約30%がNCCになるという。
ただし、いくつかの問題もある。
例えば、水との相性だ。大量の水に晒されると、セルロースがH2O分子で満たされて乾燥体積が約2倍になるため、セルロース構造にナノ空孔が生じてしまう。
研究者らは、塗装処理または疎水処理によって、水を防ぎながらNCCの強度を保つ方法を模索しているところだ。
まだまだ、製造には課題は多くあるようですが、作り方は意外とシンプルのようです。
最近のセルロース関連の動きとしては
■ナノ結晶セルロース、加セルフォースが実証生産開始 (2012/02/23)
パルプ世界大手の加ドムタールが出資するセルフォース(CelluForce、モントリオール市)は、ナノ結晶セルロース(NCC)の実証製造設備を完成させサンプル供給を開始した。
用途開発の推進が目的で、生産能力は日量1トン。NCCは木質バイオマスを利用した環境特性に優れるナノ材料として、樹脂・ゴムとの複合材料、フィルムのガスバリア性向上などが期待されている。
セルフォースは北米を中心に約20社と共同研究を行っているが、実証設備の稼働を契機に日本企業とも提携する。
引用:化学工業日報
■セルロース分解の様子解明 バイオ燃料への応用期待 (2011/09/02)
植物の繊維質の主成分で茎や葉に多く含まれるセルロースが、酵素セルラーゼによって分解される際に、セルラーゼ分子の流れがセルロース表面の凹凸で渋滞し、分解効率が低下する現象が起きていることを、金沢大と東京大の研究チームが突き止めた。
2日付の米科学誌サイエンスに掲載される。
金沢大理工研究域の内橋貴之准教授は「酵素分子の渋滞を解消して効率的に分解する方法を見つければ、セルロースを分解してできるエタノールなどのバイオ燃料やプラスチック原料を効率的に生産できるようになる」と研究成果の応用に期待を寄せている。
引用:47NEWS
このセルロースは木材から作られるということで環境への負荷も小さく、断熱材、包装材料や食品、薬品、など用途はすごく多彩。
環境にも配慮しなければいけない現在にすごくマッチしている印象。
廃材などの有効活用などなど。
現在、カーボンファイバーでは東レ、東邦テナックス(帝人グループ)、三菱レイヨンの日本勢で世界市場の7割以上。
しかし、カーボンファイバーから結晶セルロースに時代が移行するはず。
その前に研究、実用化を先行して世界を客観してほしいです。
ありがとうございます。