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任天堂、「マジコン」の販売会社5社に販売差し止めの訴訟

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2008.08.07|iwamura

ちょっと前のニュースですが、気になっていたゲーム関連の訴訟トピックを一つ。
先月末、NINTENDO DSソフトのプロテクト解除を行う「マジックコンピュータ」通称「マジコン」の販売会社5社に、任天堂以下54社のソフトメーカーが、販売差し止めの訴訟を起こした。この訴訟にまつわる顛末が、ちょっと気になったのでレポートしたい。

「マジコン:違法DSソフト使える機器販売 任天堂など、中国系5社を提訴」
任天堂は29日、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」に装着すると、違法コピーされたゲームソフトで遊べる「マジコン」と呼ばれる機器を輸入販売している中国系の「嘉年華」(東京都文京区)など5社に対し、不正競争防止法に基づき輸入販売の差し止めを求める訴えを東京地裁に起こした。カプコンやセガなどDS用ソフトの国内ゲームメーカー54社と共同で行った。

◇通称「マジコン」
マジコンは、インターネットのサイトに公開された違法ソフトをパソコン経由で取り込み、DSに装着してソフトを複製する機器。「R4 Revolution for DS」などがあり、国内に数十万台普及しているとされる。DSには複製ソフトを起動しない仕組みがあるが、マジコンを使うと動かすことができる。

任天堂は「マジコンが市場に広まると、ゲーム産業全体の健全な育成が阻害される」と指摘している。一方、提訴を受けた5社のうち、2社は「数カ月前に既に販売をやめた」「訴状を見ていないのでコメントできない」と話している。任天堂は海外でも同種の訴訟を起こしており、韓国では今年7月、販売会社に対して販売の差し止めが命じられた。

毎日新聞 2008年7月30日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080730ddm041040070000c.html

今回の事例においても任天堂法務部の手腕が光る。まず、スクウェアエニックスの新作ソフト「ドラゴンクエストV」で、コピー防止措置を仕掛けた。「船が港に着かない」ってこのコピーガードは素晴らしいセンスであるとも思った。

スクエニがDS版ドラクエ5にコピーガード「船が港に着かない」
17日に発売されたニンテンドーDS用ソフト『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』に、違法コピーに対抗するためのコピーガードが施されていることが明らかになった。音楽CDや映像DVDなどと同様に、違法コピーが多く出回るゲーム業界の中で、メーカー大手の「スクウェア・エニックス」が不法ユーザーに一矢を報いた形だ。

『ドラゴンクエストV』は、92年にスーパーファミコン用ソフトとして発売され、社会的なムーブメントを巻き起こした大ヒット作。04年にはプレイステーション2に移植され、今回、様々な新要素を加えた形でニンテンドーDSに再移植されていた。そんなDS版「ドラクエ5」だが、発売日前日の16日前後からネット上に違法コピーデータが出回っていたという。この違法データをプレイした者のうち数人が、ネット掲示板に「オープニングに出てくる一番最初の船がいつまで経っても港に着かないんですけどどうすればいいんですか?」などと書き込んでいたのだ。

この書き込みに対し、ネット上では「ついにメーカーがコピーガードを仕込んだか?」「いやいや、単なるバグでは?」など様々な憶測が流れた。

噂について、発売元であるスクウェアエニックスの広報部に問い合わせてみると、「確かに、コピーだと船が港に着かないようになっています。違法コピー対策ということで、そういう仕様にしています」とのこと。スクウェアエニックスでは、今後も様々な形で違法コピーに対して厳格に対応していくという。(写真は『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』HPより)

http://www.cyzo.com/2008/07/post_772.html

これを翌日の7月18日には「マジコン」販売会社がファームアップで対応したのだが、この行為は「不正競争防止法」第2条第10項の禁止項目「営業上用いられている技術的制限手段の回避機能の提供」に当たる。つまり最初から、マジコン側でコピーガードが破られることは想定済みだったのだろう。でなければこの短期間に54社も提訴に加わることはない。55社も集まって提訴するは非常に調整が面倒だ。SFC版「マジコン」も同様の状況で販売差し止め請求を行い、認められる判決が出ているで、裁判での勝利は確定的と言っていい状況だ。

ニンテンドーDS用機器に対する法的措置について

このたび、任天堂株式会社(本社:京都市南区、取締役社長:岩田聡)は、ニンテンドーDS(ニンテンドーDSLiteを含む)で起動するゲーム・プログラムを開発・販売しているソフトメーカー54社と共に、「R4 Revolution for DS」に代表される機器(いわゆる、「マジコン」と呼ばれる機器)に対し、不正競争防止法に基づいて、輸入・販売行為の差止等を求める訴訟を、同行為をなす複数社に対して東京地方裁判所に提訴いたしましたのでお知らせします。

これらの機器により、インターネット上の違法アップロードサイト等から入手した本来ニンテンドーDS上では起動しないはずのゲーム・プログラムの複製物が、起動可能となるため、当該機器の輸入・販売等の行為により、当社およびソフトメーカー各社は極めて大きな損害を被っており、到底見過ごすことのできないものです。

当社およびソフトメーカー各社は、このような機器が市場に蔓延することにより、コンピュータゲーム産業全体の健全な育成・発展が阻害されると判断し、同種同等のいわゆる「マジコン」と呼ばれる機器に対して、継続して断固たる法的措置を講じる所存です。

http://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2008/080729.html

ユーザーにとってはどうなのだろう。これには「個人の複製権」の適用範囲が関わってくる。著作権法第30条には「技術的保護手段の回避」が行われた場合には「個人の複製権」が失われるとある。今回「マジコン」使用が「技術的保護手段の回避」であると裁判で認められた場合、「個人の複製権」を盾に身を守ることはできなくなる可能性がある。おそらく任天堂法務部はその辺りまで睨んで、7月29日に訴訟を起こしたと思われる。

今回に限らず、任天堂法務部は様々な裁判でその手腕を光らせてきた。いくつか例をあげる。

キングコング裁判(1982年)
1982年、米大手映画会社のユニバーサル映画(当時はMCA傘下)が、『ドンキーコング』は当時同社が版権を保有していた映画『キングコング』のキャラクター著作権を侵害しているとして損害賠償を求める訴訟を起こした。これに対し任天堂の米国法人Nintendo of Americaは、逆に名誉毀損の反訴を起こし真っ向から対決。そして裁判の過程において、元々ユニバーサル映画はオリジナルの『キングコング』(1933年版)に関する版権を取得せずにリメイク版の『キングコング』(1976年版)を制作していたことが判明したため、「そもそもユニバーサル映画は『キングコング』に関する版権など保有していない」とユニバーサル映画側の訴えは却下。「『ドンキーコング』と『キングコング』は全くの別物である」として、1986年に任天堂はユニバーサル映画から約160万ドルの損害賠償を勝ち取った。

テトリス事件(1989年3月)
セガと任天堂で、テトリスゲーム化の競争が起きた。セガはアタリ社とその子会社テンゲン社から権利を取得。一方任天堂はソ連外国貿易協会と家庭用ゲーム機向けソフト独占販売契約をした。アタリ社とテンゲン社は、権利を侵害されたとして訴訟を起こし、対して任天堂はテンゲンを販売差し止めの逆提訴。全面対決となる。実はアタリ社が持っていたテトリスの権利は、いくつもの会社を通して購入したもので、IBMパソコン互換機用のみの権利だった。任天堂はこれを調べ上げアタリ社とテンゲン社は敗訴。販売差し止め請求によりセガはテトリスを販売できなくなった。

ポケモン「ユンゲラー」裁判(2000年12月)
ポケモンのキャラクター「ユンゲラー」は自分の権利を侵していると、自称超能力者ユリゲラーに訴えられたが、却下された。実際の裁判の争点は、ポケモンナンバー64番「ユンゲラー」は日本でしか著作権を取ってない。またユンゲラーと呼称するポケモンは、日本でしか発売されてない。日本国内向けに、日本国内で販売された製品には、海外の法が適用されない。ゆえに、アメリカの連邦法での訴訟要件を満たしてない・・・とのこと。実際にアメリカ版のソフトから「ユンゲラー」が入っていない事実は、非常に驚かされる。

任天堂法務部の事件を見渡すとある共通点が分かる。それは徹底的な事前調査だ。何か起きそうな所は先回りして対抗手段を取っておく、その技量が素晴らしい。事業部門が法務部門の連携がうまく行かない事で、後々になってトラブルになることは往々にしてある事ですが、企業にとってのリスク回避と資産を守るために、事業部門と法務部門のバランスがうまくいった事例として参考になりますね。

参考
任天堂法務部 最強列伝 – 東京のはじっこで愛を叫ぶ
http://d.hatena.ne.jp/tenten99/20080730/1217425696

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