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さまざまなアプローチからの“人工光合成”☆
2014.01.24|shiozawa
太陽光発電の効率は普及している製品の場合、10%~20%程度といわれています。
世界最高効率としては、“38%”
2013年1月の時点で、太陽光発電の変換効率の世界記録を持っているのはシャープだ。 ( 2013年01月11日)
シャープは2012年12月に、変換効率37.7%の太陽電池の開発に成功したと発表している。
これはまだ研究開発段階のものであり、サイズもおよそ1cm四方とかなり小さい。
引用:Smart Japan
それに対して、植物の光合成は85%を超えるといわれています。
そこで、“人工的な光合成ができないだろうか”ということで多くの研究者が日々研究をしているようです。
そこで今回、“人工光合成”の最新情報をご紹介。
■東工大と豊田中研、光を捕集する「人工の葉」を開発。植物の光合成に匹敵する人工光合成にめど
東京工業大学理工学研究科の石谷治教授と豊田中央研究所の稲垣伸二シニアフェローの共同研究チームが、2段階のエネルギー移動で光を効率よく捕集する分子システムを初めて開発した。
太陽エネルギーを高効率で化学エネルギーに変換する植物の光合成に匹敵する人工光合成の実現につながる成果。Chemical Science に論文が掲載される。
多くの有機基(ビフェリル)が導入された壁で構成された多孔質材料に、直鎖状の5核レニウム錯体の中心にルテニウム錯体が結合した分子が固定されている。
400個を越える有機分子が吸収した光エネルギーを、まず5つのレニウム錯体が集め、最終的に一つのルテニウム錯体に集約する光を吸収する有機分子を多量かつ規則正しく配置した壁で構成される多孔質材料のメソポーラス有機シリカ(PMO)に金属錯体を導入することにより、400個を超える有機分子が吸収した光エネルギーを集めた。
まず5つの金属錯体が集め、最終的に一つの分子に集約することができた。
引用:SJNニュース
ちょっと難しい内容ですが、太陽光には幅広い波長がありますので、一度それぞれの波長を得意とする数種類の物質に光エネルギーを吸収させて
おいて、次にその吸収させた数種類の物質から一つの物質にエネルギーを集約する。
今回のものは“2段階構成”でエネルギーを集約するところがミソのようです。
そうすることでいままでには非常に多くの錯体が必要でしたが、この新しい方法によって錯体の種類を効率よく減らすことができるようなったようです。
そして次は、
植物の光合成は、光のエネルギーを利用して水と二酸化炭素から炭水化物を作り出すというもの。
次の物は植物を使って、植物が持っているポテンシャルを100%以上を引き出して上げる技術。
■光合成によるバイオプラスチックの生産効率で世界最高レベル達成
-ラン藻によるバイオプラスチックの新たな合成経路を確立-ポイント
・光合成だけでバイオプラスチックを生産、生産効率14%を達成
・ラン藻に微生物由来の遺伝子を導入、糖類不要の培養液で育成が可能に
・バイオプラスチックの低価格化と環境負荷の低減に貢献
さまざまな用途に使われているプラスチック製品はほとんどが石油由来です。
これに対して、微生物が作りだすバイオプラスチックは、微生物による分解性を備えるなど環境への負荷が少なく、温暖化の原因とされるCO2の削減効果が期待できます。
しかし、バイオプラスチックの生産には、微生物の培養に大量の糖と特別な施設が必要で、コスト面に課題があります。
共同研究グループは、バイオプラスチックの1つ「ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)」[3]を光合成だけで生産するためにラン藻に注目しました。
ラン藻にバイオプラスチック合成に関わる遺伝子を導入し、光合成によるバイオプラスチック合成手法の開発に取り組みました。
これが可能になれば、太陽光と、糖を含まない無機塩類の培養液から、CO2からプラスチックの生産が可能になります。実験では、ラン藻に3種類の微生物由来の遺伝子(phaB、 phaC、 nphT7 )を導入しました。
その結果、溶液の炭素源なしでラン藻の乾燥重量の14%に当たるPHAを合成し、世界最高レベルの生産効率を達成しました。さらに微量の炭素源として0.4%の酢酸を加えることで、PHA生産量は乾燥重量の41%まで向上しました。
引用:理化学研究所
日常で使っているプラスチックは化石燃料である“石油”から作っています。
そのプラスチックを、光合成の力で作る事で(つまりは光エネルギーだけで)作り出すことができる。
これも光合成を使ったエネルギーの有効活用です。
そして次に紹介する内容は、“細胞を人工的に作る”という研究です。
■世界初! プラスティックで「真核細胞」の作成に成功
オランダの化学者チームが、ポリマーによる人工的な「真核細胞」を世界で初めて作成した。
このような細胞が可能にする新しいマイクロレヴェルの技術によって、人工光合成やバイオ燃料の製造に革命が起きるかもしれない。
オランダにあるラドバウド大学ナイメーヘン校の化学者チームが、ポリマーを使った「真核細胞」を世界で初めて作成した。
真核細胞とは、核などの組織が膜で包まれた細胞であり、地球上のすべての複雑な生物形態の基盤となっている。真核細胞では、とても規模が小さく非常に効率のよい化学反応が可能だが、実験室でこれを再現するのは難しかった。
化学者チームは今回、細胞の基盤構造体に水滴を使い、そこに、核などの主要な構成要素を真似た酵素で満たされた、小さなポリスチレンの球を挿入した。
そして、細胞壁の代わりに「ポリブタジエン-b-ポリ」で全体を包み、ポリマーソーム(合成ポリマーで形成された膜によって定められたベシクル=球殻状に閉じた膜構造を有する小胞)を形成した。
こうしてできたものは、本物の細胞のように仕切られており、多段階の化学工程に対応できる。研究チームは概念実証として、これを暗闇の中で光らせた。
今回の結果は、合成生物学と合成化学に大きな影響を与える可能性がある。このような細胞が可能にする新しいマイクロレヴェルの技術によって、人工光合成やバイオ燃料の製造に革命が起きるかもしれない。
引用:Wired.jp
人工光合成では到底、植物の光合成の効率には到達できないところを、
“植物の細胞とそっくりなもの”を作ることで植物並みの光合成の効率を実現できるかもしれないとうこと。
今回紹介した3つはアプローチはそれぞれ違うものの、どれも
“光合成でより効率よくエネルギーを得たい”といった同じ目標に進んでいます。
はたして、
・人工的な光合成をさせてエネルギーを得る
・植物の光合成のポテンシャルを高めてエネルギーを得る
・植物の細胞を人工的に作り、光合成をさせてエネルギーを得る
どれが将来的にもっとも高効率でエネルギーを得られるようなるでしょうか。
とても面白い競争です。
ありがとうございました。