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おみやげ/星新一
2011.08.16|iwamura
フロル星人たちの乗った宇宙船は、星々の旅を続ける途中、地球へも立ち寄った。しかし人類と会うことはできなかった。なぜなら、人類が出現するよりずっと昔のことだったのだ。
「どうやら、わたしたちのやって来るのが、早すぎたようですね。最も知能がある生物といったら、サルぐらいのものです。もっと進化したものが現れるには、しばらく時間がかかります。」
「そうか。それは残念だな。文明をもたらそうと思って立ち寄ったのに。しかし、このまま引き上げるのも心残りだ。おみやげを残して、帰るとしよう。」
フロル星人たちは、金属製の大きなタマゴ型の容器をつくり、その中にいろいろの物を入れたのだ。
簡単に宇宙を飛び回れるロケットの設計図。あらゆる病気を治し、若がえることのできる薬の作り方。みなが平和にくらすにはどうしたらいいかを書いた本。さらには文字が通じないとといけないので、絵入りの辞書をも加えた。
「将来、住民たちがこれを発見したら、どんなに喜ぶことでしょう。」
「ああ、もちろんだとも。」
「しかし、早く開けすぎて、価値のある物とも知らずにすててしまうことはないでしょうか。」
「これはじょうぶな金属でできている。これを開けられるぐらいに文明が進んでいれば、書いてあることを理解できるはずだ。」
「そうですね。ところで、これをどこに残しましょう。」
「海岸ちかくでは、津波にさらわれて海の底にしずんでしまう。山の上では、噴火したりするといけない。それらの心配のない、なるべくかんそうした場所がいいだろう。」
フロル星人たちは、海からも山からもはなれた、さばくの広がっている地方を選び、そこに置いて飛び立っていった。
長い長い年月がたっていった。地球の動物たちも少しづつ進化し、サルの仲間の中から道具や火を使う種族、つまり人類が現れてきた。なかには、これを見つけた者があったかもしれない。だが、気味悪がって近寄ろうとはしなかったろうし、近づいたところで、正体を知ることはできなかったにちがいない。
また、長い長い年月が過ぎていった。人間たちは、しだいに数が増え、文明も高くなってきた。
そして、ついに、金属製のタマゴのわれる日が来た。しかし、砂の中から発見され、喜びの声とともに開かれたのではなかった。
と、いうことで、nhkさんの「映像の世紀」~人類は地獄を見た~ですが。
※nhkオンデマンドこちら
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耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、以って万世の為に太平を開かんと欲す。
基本的に右でも左でもあって、ノンポリなんだけれども、やっぱり唯一の被爆国としては、原子力に対するスタンスは考えなくてはいけない国だと思う。
Fukushimaは二度目だ。
宇宙まで飛べるロケットや何でも治す薬、新鮮な野菜や海の幸。未来の可能性や自然を一瞬にして破壊する力を持った原子力に対して、畏怖、あるいは嫌悪の心を、忘れるべきではないと思うなあ。